2022年4月入学の「図書館情報資源特論」レポート解答例になります。
文章の構成など、少しでも参考になればと思います。
*注* 解答例の丸写し提出は大学より禁止されていますので、参考程度に留めて下さい。
「図書館情報資源特論」レポート設題
灰色文献とはなにか、灰色文献の定義や意義、特性について記述してください。また、灰色文献と言われる具体的な資料名を挙げて、その資料の特徴についても説明してください。
*「レポート作成上の留意事項・ポイント」、「総評基準についてのメッセージ」にも、レポート作成のヒントがありますので、レポート作成前にも後にも読むことをお勧めします。
「図書館情報資源特論」レポート解答例
1.序文
図書館資料を収集する際に、灰色文献という考え方がある。非市販資料や入手困難資料のことをいい、書店・取次などの一般流通を経由せず、入手が難しい資料のことをいう。市販され誰でも入手可能な一般の資料を「白」、政治上・軍事上の機密事項が記入され少数の特定者以外は非公開とする機密文書を「黒」とし、灰色文献はその中間に位置する。灰色文献の定義や意義、特性について具体例を挙げ述べる。
2.灰色文献とは
灰色文献という用語は、1970年ドイツで最初に使われた。その定義は、社会背景を受けて長きにわたり検討され変容してきた。商業出版ルートの有無、公表された資料(下書き文書を含まず)という二点が、定義の下地となっている。1997年頃からのインターネット普及・情報電子化で、情報を伝える媒体や流通方法が変容し、灰色文献やその定義に影響を与えた。用いられる表現が「モノ」から「情報」に変化し、「電子フォーマット」の文言が使われた。そして2010年のプラハ定義「知的財産権により保護された紙や電子フォーマットで、政府、大学、ビジネス、産業のあらゆるレベルにおいて生み出される多様なドキュメント形態で、図書館所蔵や機関リポジトリで収集、保存される十分な質をもつものを表す。しかし、商業出版社によってコントロールされているのではない。主たる活動が出版を本業としない組織によってコントロールされている。」が示されている。灰色文献に一定の質を求めることとし、その尺度の一つとして図書館や機関リポジトリが位置づけられた。
灰色文献は、積極的に収集・保存しなければ消滅していく。利用者はアクセスどころかその存在さえ知らずにいることとなる。収集・保存し活用されなければ、資料はなかったものと同じである。資料が存在するということを認識させ、収集・保存・活用の行動につなげることに、灰色文献の意義がある。また上記のように定義自体が変容することも灰色文献の特性である。これは利用者の情報媒体の変化に順応してきたためである。例えば近年、インターネット上では膨大な情報が日々更新される。電子化された情報が閲覧・ダウンロードできる状態にあり、速報性があるが、恒久的なアクセスが保証されているわけではない。恒久的アクセスの保証が課題になるとともに、そもそもインターネット上の灰色文献とはなにか、保存すべき情報はどれか、その定義や質を議論する必要がある。
3.灰色文献の具体例
(1)政府刊行物
政府あるいは国際機関が法律あるいは規則に基づいて一般に公表する目的で作成した刊行物で、主として中央政府の刊行物をいう。官報、白書、統計書が代表例である。
(2)地方自治体が作成した資料
地方公共団体が作成した文書や広報誌、統計、調査報告書、各種制度運用マニュアルなどの行政資料や、地域資料が当てはまる。いずれの資料も販売されていないため、収集の際には当該自治体の部局に対して、能動的に収集する必要がある。地域の専門機関との連携も必要である。
(3)民間のシンクタンク、調査研究機関などが作成・発行したプロジェクトレポートや市場調査報告
研究機関において、研究成果を機関内や同じ分野の研究者に対する情報伝達を目的とした研究報告書であるテクニカルレポートなどが挙げられる。
(4)学位論文
学位を取得するために書かれた論文である。本来流通を目的にしていないので、資料的価値が高い反面、一般的には入手困難である。現在では、電子学位論文、オープンアクセスや機関リポジトリにおける利便性が求められている。デジタル時代の学位論文は、未だに灰色論文なのかについて議論の余地がある。
(5)会議録
学会などの会議での発表論文とディスカッションを中心にその会議の正式な記録をまとめたものである。一般的には参加者にしか配布されず入手は困難である。
4.結語
灰色文献は定義自体が変容し続けてきた。対象となる情報資料の範囲を社会変化に順応させなければ、見過ごされ失われていくことを免れないからである。これまでは商業出版ルートに乗らない入手困難な資料を探し出す事に重きが置かれてきた。収集の視点が主で、その後整理・提供という視点が加わったが、いずれも、既に作成された灰色文献をどう扱うかという受動的な視点が多かった。しかし、インターネット普及・情報電子化で灰色文献の利便性が大きく変化した。GL20では、グレーデータとしての研究データを記録、価値、帰属、持続性、利用、公開、査読の観点から区分する提案があった。データに対する試みや新たに質の観点も含めたことが特徴で、一つの問題提起といえる。
2010年以降、収集に加え、整理、保存、提供し、利用者が灰色文献にアクセスしやすくすることが重要な役割となった。またピサ宣言にあるように、標準化や保存、質の向上を目指すことが新たな役割として追加された。オルトメトリクスなど新しいツールを活用し、灰色文献が社会に与える影響に関心を持つことも図書館員の役割である。新たな灰色文献へ、図書館員の意識が変わっていくことが求められる。
参考文献
池田貴儀『インターネット時代の灰色文献 灰色文献の定義の変容とピサ宣言を中心に』情報管理2015, vol.58, no.3
池田貴儀『灰色文献のいま~2010年代の動向を中心に~』Current Awareness Portal(図書館に関する情報ポータル)https://current.ndl.go.jp/ca1952
講評
灰色文献の定義や特徴ついて記述できています。
近年の灰色文献では、各資料は一部ウェブで公開されているものもあります。
どのようなデータベースで閲覧できるのか調べて具体的に記述するとさらに良くなったでしょう。
感想
「図書館情報資源概論」のテキストも参考にして作成しました。参考文献に記載しているとおり、webで検索した内容をおおいに参考にしました。問われている内容が現代においても変わりゆく内容であるだけに、参考資料もより新しいものを利用した方がよい分野だと思います。
講評にあるとおり、もう少し具体的に記述すると良かったようです。他の科目でも同様の指摘があったため、私のレポートは抽象的になりがちなのだと思います。
はじめて学んだ言葉・考え:灰色文献

「図書館情報資源特論」を学んで、現代における図書館に求められる役割について知りました。今後も日々更新される内容であり、図書館員となった場合にどのように最新の情報を収集し続けるか、考えさせられます。
レポート作成で意識したこと、書き方については、こちらにまとめています。
随時更新していこうと思います。わかりにくい点や修正すべき点などがあれば御指摘下さい。
よろしくお願いします。