2022年4月入学の「生涯学習概論」レポート解答例になります。
文章の構成など、少しでも参考になればと思います。
*注* 解答例の丸写し提出は大学より禁止されていますので、参考程度に留めて下さい。
「生涯学習概論」レポート設題
生涯学習支援における図書館の役割について、図書館の3要素である「人(司書)」「資料、情報」「施設」の3つの観点から述べなさい。
*「レポート作成上の留意事項・ポイント」、「総評基準についてのメッセージ」にも、レポート作成のヒントがありますので、レポート作成前にも後にも読むことをお勧めします。
「生涯学習概論」レポート解答例
1.序文
生涯学習とは、自己の充実・啓発や生活の向上のため、自発的意志に基づき、必要に応じ、自己に適した手段・方法を選んで、生涯を通じて行う学習のことである。生涯学習を振興していく上での基本的考え方として「個人の要望」と「社会の要請」のバランスを確保すること、「生きがい・教養」だけでなく「職業的知識・技術」を習得する学習の強化が論じられてきた。学習活動の拠点として社会教育施設が整備され、図書館は、法律上明記されている社会教育施設の一つである。図書館は、学習に必要な資料や情報を提供するため、今後、社会教育における役割はさらに重要になる。生涯学習支援における図書館の役割について述べる。
2.生涯学習支援における図書館の役割
生涯学習支援における図書館の役割について、図書館の3要素である「人(司書)」「資料、情報」「施設」の3つの観点に着目する。
司書は、地域住民の生涯学習の直接的な支援をその職務としており、多様化、高度化する地域住民の学習ニーズに対応して、その果たすべき役割に対する期待はますます高まってきている。その役割は、学習者個人の特性の理解につとめ、各々が学習の目的を達成できるよう最善の支援を行うことである。しかし、個々人を個別に理解し、個々への対応を行うことには限界がある。そこで、学習者に共通する特性や解決すべき課題を踏まえ、その上できめ細やかな教育的配慮をもって学習者の学びの過程を支援していくことが望まれる。支援の際には、個人の要望を満たすだけではなく、社会の要請とのつながりを提供し、社会での自分の立ち位置を模索する機会を与えることも必要である。垂直軸と水平軸の教育を支援するのである。また、図書館業務に関する知識に加えて、IT技術、経営管理能力、社会の変化や地方公共団体の行政に関する知識、地域の関係機関と連携・協力するための広い視野と行動力が必要である。この多様化、高度化するニーズに対応するために、専門職としての自覚を持ち、自らが生涯学習を実践していくことが求められる。
学習には、図書、雑誌・新聞、パンフレット等の印刷資料とネットワーク情報資源が不可欠であり、これらを利用することによって学習が行われる。インターネット等の情報技術が急速に発達し広く利用され、大量の多様なネットワーク情報資源がインターネット上で公開されている。これを背景に現在、二次資料の多くがデータベースとして公開され、また一次情報の公開も広がりつつある。このため、図書館に対して新しい役割が求められている。インターネット端末の整備、リンク集やパスファインダー等の整備、ネットワーク情報資源の利用促進、郷土資料・地方行政資料や専門的コレクション等の内容を電子化しウェブサイトでの公開、利用者への情報活用能力の学習機会の提供、等である。これまで貸出サービスが中心で、レファレンスサービスは不十分であった。多様化、高度化する地域住民の学習ニーズに対応して、地域の課題を解決するために、レファレンスサービスの充実が求められている。
図書館とは、先に述べた資料や情報を、司書等の専門的職員が中心となって、収集・整理・保存し、閲覧・貸出・複写・レファレンスサービス等によって提供する組織である。図書館は、設置者、設置の目的、利用者等によって、公立図書館、私立図書館、学校図書館、大学図書館、専門図書館、国立図書館の六つの館種に分かれる。公立図書館・私立図書館はあらゆる分野の資料を収集し、一般の人々に広く公開される。学校図書館は学校教育に必要な資料を収集し、児童・生徒と教員が利用する。大学図書館は大学の教育・研究に必要な資料を収集し、学生と大学教員が利用する。専門図書館は専門分野に関する資料を収集し、設置機関の会員や職員が利用する。国立図書館は国内の全出版物を網羅的に収集し、書誌情報を作成し、それをもとに国民と各館種の図書館に対するサービスを行う。具体的には、全国の図書館に対して所蔵資料の貸出とレファレンスサービスを行い、全国の図書館を支援している。図書館は、サービスの向上と運営の効率化のために、日常的に連携・協力している。その中心は資料の相互貸借と書誌情報の提供である。このように、各館種が利用者に応じて、直接的または間接的に生涯学習支援を行っているのである。
3.結論
生涯学習において図書館を利用することで、そこにある資料や情報を入手するだけでなく、社会とのつながり、社会での自分の立ち位置を模索する機会が与えられるべきである。「人(司書)」「資料、情報」「施設」の観点から図書館自ら自施設の見直し・発展を行い続ける必要がある。ただし、図書館だけでの発展をめざすべきではない。他の社会教育施設との間で連携・協力を進め、各自治体や教育委員会との相互理解と交流を進め、図書館の利用は学習の一環であることを明確にし内容を広報すべきである。社会教育全体としての発展をめざし、図書館がその中心を担うべきである。
参考文献
香川正弘ほか(2016)『よくわかる生涯学習 改訂版』ミネルヴァ書房
講評
このレポートでは生涯学習支援における図書館の役割について3つの観点から述べて下さい。
最初の設題は、図書館の「司書」として、どのような生涯学習支援ができるかを述べて下さい。ここでは「新しい公立図書館像」や「公立図書館の基本的な役割」、「専門職員としての司書」の視点を押さえることが大切ですが、ここはこれでよいです。レファレンスサービスの必要性について述べられています。
二つ目の設題は、「資料、情報」の視点から生涯学習支援における図書館の役割について述べてください。ここでも「公立図書館の基本的な役割」「公立図書館と情報技術」の視点を盛り込むことですが、ここもこれでよいです。図書館の情報化に対応した取り組みについて述べられています。
最後の設題は、各種の図書館「施設」として、どのような生涯学習支援ができるかを述べてください。ここでは「生涯学習と図書館」「図書館の種類」「社会教育施設としての公立図書館」の視点を踏まえて述べることですが、ここもこれでよいです。図書館の館種による生涯学習支援について述べられています。てください。
最後に、これら3つの観点を踏まえ、図書館の役割としての総括的な生涯学習支援を述べています。
これで合格です。今後も精進して頑張ってください。
感想
テキストは、各章で同じ内容が、違った表現で繰り返し述べられている印象でした。それだけ重要な内容ということですね。レポートの設題は「情報サービス論」と少し重なる部分がありました。比較的書きやすい内容であり、参考資料は参考程度で、テキストの内容で解答しています。
「序論」…まず設題の要語「生涯学習支援」「図書館の役割」について書きました。
「本論」…設題にある3要素に着目し、それぞれ段落を分けてまとめました。
「結論」…「本論」のまとめと、自分なりの展望を書いています。
はじめて学んだ言葉・考え:垂直的統合、水平的統合

「生涯学習概論」を学んで、学歴社会ではなく生涯学習社会が求められる現状で、図書館が、自分が、どういう立場で社会に向かっていけばよいのか、考えさせられました。
そして学習すればするほど、自分が今している学習を肯定してもらっているような、「勇気出して司書資格の出願をして良かった!」と思えるような、内容でした。
レポート作成で意識したこと、書き方については、こちらにまとめています。
随時更新していこうと思います。わかりにくい点や修正すべき点などがあれば御指摘下さい。
よろしくお願いします。