図書・図書館史レポート(2022 近大通信司書)

レポート

2022年4月入学の「図書・図書館史」レポート解答例になります。

文章の構成など、少しでも参考になればと思います。

*注* 解答例の丸写し提出は大学より禁止されていますので、参考程度に留めて下さい。

「図書・図書館史」レポート設題

日本または西洋のどちらかを選び、それぞれの時代(古代、中世、近世、近代以降)の図書館発展の特徴をコンパクトに要約し、かつ私見(400字程度のまとめ)を述べてください。

*「レポート作成上の留意事項・ポイント」、「総評基準についてのメッセージ」にも、レポート作成のヒントがありますので、レポート作成前にも後にも読むことをお勧めします。

「図書・図書館史」レポート解答例

1.序文

 日本において、それぞれの時代の図書館発展の特徴について述べる。

2.図書館発展の特徴

(1)古代

 4、5世紀頃に中国や朝鮮半島から文字が伝わり、仏教伝来とともに情報伝達媒体である紙や筆が伝来し、経典が普及した。経典を収蔵するための経蔵が生まれ、資料保存という図書館機能の一部を有したが利用者は僧籍関係者に限られた。

 大化の改新で律令国家が形成され文書中心主義が広まる。紙は高価で木簡と併用された。『古事記』『日本書紀』など国史編纂の他、行政や諸記録物が作られ、役所は保管庫を設け、国の重要機関として図書寮が登場した。図書寮は図書の保管、書写を専門に扱った。

 平安時代中期に遣唐使が廃止され大陸文化の影響は薄らぎ、国風文化が成熟し、貴族中心の公家文化が栄えた。仮名文字が成立し、『枕草子』『源氏物語』など文学が発達し、貴族は学問研究のための文庫を設けた。石上宅嗣は芸亭に儒教の典籍を収蔵し、好学の人達に開放した。日本最古の公開図書館である。菅原道真は紅梅殿を設け、菅原氏一門の子弟に開放した。限られた人への公開であったが、教育的機能を兼ね備えた機関であった。

(2)中世

 鎌倉時代には貴族にかわり武士が台頭し、御家人制度により封建制度が確立された。中央の文化が地方に拡散し、文化の庶民性が強まった。武士が武家文庫を持ち、北条実時の金沢文庫や日本最古の学校と言われる足利学校が有名である。金沢文庫は政治、軍事、文学など広範囲に及び、一部の関係者、特に僧侶の利用に限定された。足利学校は儒学中心で易学と兵学に力を入れており、儒学関係特に易学の典籍が豊富であった。入学者は僧侶に限られた。

 出版は書写から印刷に移行した。中国との交流で製版が普及した。16世紀後半に西洋と朝鮮半島から活版印刷が伝来したが、当時の出版物は絵入本が多いこと、平仮名の続き文字には不適格なこと、高価なことなどの理由から約50年で途絶え、元の製版にとって代わられた。以降近代まで製版が主流となる。

(3)近世

 徳川家康による天下統一後、鎖国により約270年間天下泰平の時代が続いた。貴族や僧侶中心の文化が、幕府の学芸奨励も手伝い下層階級に伝播し、武士や町人、つまり国民文化、町人文化として栄えた。寺子屋が普及し読者人口が増え、書籍の出版・販売が増加し大衆読者が成立した。貸本屋も登場し図書館的な機能を果たした。この時代の図書館は階級制度の時代を反映した。幕府の『紅葉山文庫』は将軍や幕府の利用を目的とした専門書を蔵し、大名の『尊経閣文庫』は広く古書、旧記を蔵した。朝廷の『東山御文庫』は歴代天皇の宸翰、典籍類を収蔵した。これらは基本的に非公開であった。教育関係の文庫である『昌平坂学問所』は中央図書館的な機能を果たし、主に旗本、御家人の子弟が利用した。庶民の読書機関としての図書館が出現し、『浅草文庫』『青柳館文庫』は一般に公開され、近代公共図書館と同じ機能を果たした。

(4)近代以降

 明治維新以降、福沢諭吉が西洋諸国の図書館事情を伝え図書館運動が活発化した。国立国会図書館の源流である書籍館が発足し、身分的制約を撤廃し開放された。東京図書館を起点に「図書館」という名称で呼ばれるようになり、図書館令を契機に図書館設置が全国に波及し、国民教化の機関と捉えられた。

 戦時中は国家主義の気運が高まり、図書の疎開を行う図書館も表れ受難の時が続いた。戦後の図書館はアメリカ指導のもと再出発する。誰もが自由に利用し得るものとして開かれた図書館が目指された。日本の公共図書館は市民にサービスを提供せず、ともに歩んでこなかったという反省のもと、その役割は民主主義の基礎を成す知的自由の保障にあるという認識に至る。「中小レポート」以降、館外奉仕が強調され大きな転換期となった。現在、レファレンスサービスの充実や課題解決支援機能など、地域を支える情報拠点としての図書館が目指されている。情報伝達媒体としては、紙以外に、写真、映像など様式が多彩となり、電子媒体が普及し急激な転換期を迎えている。

3.結語

 古代から現代の図書館史について述べた。経典を保管するための経蔵に始まり、各歴史的社会背景のもと、社会に求められる形で広まってきた。どの時代でも共通していえる事は、先人の知識を蓄え、保存し、後生に伝えたいという想いである。日本では近代まで、保存はされていたが、その時代を生きる人が活用する点が疎かにされてきた。今回の学習からも、戦後までは図書館サービスが十分に行われてこなかった事がわかる。資料は活用しなければ意味がない。社会背景を踏まえ、ニーズに合った活用法が必要である。現代は情報化社会であり生涯学習が求められ、情報リテラシーを身につける場、地域の課題解決につながる場としての機能が求められている。また時代に合った伝達媒体を探究し、市民と資料をつなぐ柔軟な発展が必要である。

 日本は島国であることから、世界に誇る、守られてきた歴史がある。図書館から始まる地域振興は、グローバル社会において世界に発信され活用されることが期待される。

参考文献

三浦太郎編著『図書・図書館史』ミネルヴァ書房

講評

提出お疲れ様です。

設題のポイントをしっかり押さえ、日本の図書館史を大変分かりやすくまとめられています。特に初期の図書館が限られた特権階級のためのものから、現代の誰でも自由に使えるものに変化してきたことを理解している内容であり秀逸でした。私見も納得できる内容でした。

引き続き頑張ってください。

※気になる点

・参考文献情報で、図書情報には刊行年を必ず書きましょう。

感想

他の科目とは独立した内容となっている部分が大半なので、どのタイミングで取り組んでも書きやすい内容かと思います。「結語」で私見を記載しました。

図書情報(刊行年)の記載漏れがありました。皆さんもご注意下さい。

はじめて学んだ言葉・考え:経蔵
よう
よう

「図書・図書館史」を学んで、図書館が歴史とともにどのように変化してきたのか、興味深く読み進めることができました。日本と世界の違いから、日本の図書館の課題も見えてきましたし、また世界に発信するためのヒントにもなるのかなと思います。

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