私の場合、学習理解を深めるかつ試験対策として「科目終末試験問題」と過去問の自作解答例を作成するようにしていました。メモ程度に大まかに内容をまとめておき、試験問題に合わせてその場で自分の考えなどを追記するようにしていました。そのためここで記載する内容は、まとまった記載はではなく、文字数も少ないものや多すぎるものなど様々です。学習のちょっとした参考になれば幸いです。
参考にしたテキストのページ数も載せておきたいと思います。2022年4月入学ですので、問題内容や番号、ページ数に相違があるかもしれません。また、下記の解答で合格をした訳ではありませんので、ご留意下さい。
*注* 解答例の丸写し提出は大学より禁止されていますので、参考程度に留めて下さい。
1.生涯教育の概念について、生涯教育と社会教育との関係について
テキスト参考ページ p7, p15
生涯教育という用語は、1965年以降に日本社会に定着してきたものである。1981年の中央教育審議会の答申「生涯教育について」において、「生涯教育」は「国民の一人一人が充実した人生を送ることを目指して生涯にわたって行う学習を助けるために、教育制度全体がその上に打ち立てられるべき基本的な理念である」と述べている。
教育を、人生の初期の学校において行われるものだけとして考えるのをやめる、ということが、その中心的な考え方である。生涯教育の中で、垂直的統合と水平的統合という考え方がある。学校へ行く前に行われる教育、学校を終わった後に行われる教育、にも注目し、それらを統合的に考える必要がある(垂直的統合)。また、学校という社会組織の他に、社会のさまざまな場面において教育を行っている組織・機関があり、それにも注目する必要があり、それらを統合的に考える必要がある(水平的統合)。学校以外の教育を、学校教育と同じように、全体として考える必要がある、ということが「生涯教育」という発想・考え方の基本である。
生涯教育については統一的な定義があるわけではない。しかしその共通概念は、個人、集団、社会の向上のために、生涯を通じて人間的、社会的、職業的な発達を図る営みのことである。学習と教育の違いから述べると、生涯学習は、個人の側で行われる考え方や行動様式の変容の過程であるのに対し、生涯教育は、その個人に働きかけ、変容の中で発達を助長する営みである。学習と教育とは、教育的価値の存在という観点から、まったく異なるものである、ということを前提にしており、そうすることで行政による社会教育の意義が理解されるようになる。
社会教育とは、社会教育法第2条で、「学校の教育課程として行われる教育活動を除き、主として青少年及び成人に対して行われる組織的な教育活動(体育及びレクリエーシヨンの活動を含む。)」を指し、教育活動の一つとされている。生涯学習とは,個人の主体的な学びを基本とし,その生涯にわたって,あらゆる機会にあらゆる場所において学習することを指す。生涯学習の内容には、社会的課題・公共的課題に関するものもあるわけで、それについての学習の成果は、学んだ個人だけに帰属するものではなく、すぐに成果が出るというものでもない。そのような内容の学習機会を、行政が社会教育として継続的に提供していくことは、重要なことである。そして生涯教育の中での社会教育の立ち位置としては、生涯学習を支援する一環として行政による社会教育が存在しているという、きわめて当然のことが理解されなければならない。
科学技術が発展すれば、学校で教わったことは、すぐに古くなる。学校で教わった知識だけで、その後の人生を過ごしていくことは困難になる。学校を整備することはもちろん必要なことだが、学校の外でも教育が必要になる。日常生活の場でも、労働の場でも、あらゆる場面での教育という営みを考えることが社会の課題となる。社会の要請にしたがって、それも、全世界的な合意を得た考え方、教育改革のキイ概念として登場してきたことが意味を持つことなのである。
2.生涯学習社会と学歴社会について
テキスト参考ページ p14, p15, p18, p30, p105
生涯学習社会は、「生涯のいつでも、自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が社会に置いて適切に評価されるような」社会であると示されている。また、教育基本法第3条では、「生涯学習の理念」として、「国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない」と、生涯学習社会の実現が到達目標・政策目標として示されている。
戦後の競争社会において、周囲の他者は、常に競争相手として存在するような環境にあっては、円満な人間性が育たず、何らかの対応が求められてきた。いわゆる学歴社会とは、人生の初期に教育を受けた履歴がその後の人生に決定的な影響を与える社会というように考えられる。問題はそこに、学歴によって人間の固有の権利を制限するということが絡んでくることにある。能力の保障があれば、そのような制限は不要なことになる。学歴を、資格などに絡めないことによって、学歴社会と言われる社会の弊害の一部は除去される。学歴社会の克服に向けた施策も展開されてきてはいる。だがしかし、学歴社会の、より深い問題は、人々の意識に関わる問題なのでもあろう。
学歴社会においては、主として十代までという人生の限られた時期に、社会的に評価されている学校に入るために、学校教育の体系の中でいかに効率的に知識を吸収するかを追求することが求められる。これに対し生涯学習社会においては、学校教育を受ける時期は生涯を通じて開かれているし、学習する場は学校に限られず、学校教育と地域における種々の学習機会を連携させ効果的に組み合わせ、生涯にわたっていつでもどこでも学ぶことができるという環境を実現することを目指している。
学習内容を個人の利害に関するものから、社会の存立に関するものまで広げて考えることによって、生涯学習社会の意味は変わってくるといえる。生涯学習が個人の楽しみの追求に矮小化されないで、社会的課題・公共的課題に迫る学習としてとらえられれば、生涯学習社会は、大いに期待される社会であることは間違いない。
3.戦後の社会教育行政の基盤整備と進展について
テキスト参考ページ p24−26
社会教育行政は、社会教育法第3条に規定されるように、国民の自主的な学習活動を支援するための環境整備を重要な任務とすることから、人々の学習活動の拠点である社会教育施設の整備は戦後間もない頃から極めて重要な課題であった。
1950年代半ば以降、わが国は高度経済成長期に突入し、社会構造そのものが急激に変化する。こうした状況に対応し、職業生活を豊かにするため、あるいは生きがいのある人生を送るため、生涯にわたって学習することが極めて重要な課題であった。社会教育行政も、多様化・高度化する人々の学習要求に対応して、学習機会の拡充や、学習内容の改善・充実等が図られていった。
1959年、社会教育法の大幅な改正が行われ、次の4点が見直された。第一に、社会教育主事の必置制の拡充である。第二に、社会教育関係団体に対する補助金支出を禁止する規定の削除である。第三に、公民館に関する規定の整備である。第四に、社会教育委員の職務の追加である。
1971年代には経済的安定を背景とし、人々の学習要求がますます多様化・高度化していく中、1971年に社会教育審議会答申において、「生涯教育の観点に立って、教育全体の立場から配慮していく必要がある」と提言し、初めて生涯教育の理念を導入した。生涯教育の理念とは、教育は青少年期に集中して行われる学校教育だけではなく、生涯にわたってさまざまな教育機会が提供されなければならないという考え方であり、人間の生涯という垂直軸の教育機会と、個人及び社会全体という水平軸の教育機会を統合しようとする理念であった。この答申で、生涯教育における社会教育の重要性を指摘し、今後の社会教育行政のあり方、当面の重点施策について提言を行った。
その後、社会教育行政の量的拡大の段階へと移行する。1981年の答申「生涯教育について」において、生涯教育と生涯学習の違いを明らかにし、その上で、今後は「広く社会全体が生涯教育の考え方に立って、人々の生涯を通ずる自己向上の努力を尊び、それを正当に評価する、いわゆる学習社会の方向を目指す」必要があると指摘した。さらに生涯学習の観点からみた社会教育の課題として、社会教育事業の拡充、社会教育施設の整備充実、社会教育指導者の要請等を挙げた。
このように、社会背景をもとに社会教育行政は進展をとげ、また新たな課題が生まれている。社会の要請を的確にとらえ、柔軟に変容していくことが求められる。
4.生涯学習振興の観点から、「知の循環型社会」の構築について
テキスト参考ページ p41−
2008(平成20)年2月、中央教育審議会は「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について〜知の循環型社会の構築を目指して〜」を答申した。答申では、今後目指すべき生涯学習振興・社会教育行政の方向性として、①「国民一人一人の生涯を通じた学習の支援―『国民の学ぶ意欲』を支える」ことと、②「社会全体の教育力の向上―学校・家庭・地域が連携するための仕組みづくり―」の2点を掲げた。その上で、「学習成果の活用は、職業生活や社会における多様な活動において行われるものであるが、社会全体の教育力向上の観点からも、各個人が学習した成果を地域社会におけるさまざまな教育活動に生かすことが期待されている」と、自らのニーズに基づき学習した成果を社会に還元し、社会全体の持続的な教育力の向上に貢献する「知の循環型社会」の構築を提言した。また、今後の具体的な方策として、以下の施策を挙げている。
上記①に関しては社会教育施設等を活用した地域社会における課題解決の取組等の充実、学習相談から学習成果活用までを一貫して支援する学習支援システム(ワンストップサービス)の構築、さまざまな機関・団体等が連携して学習コンテンツの影響や学習相談等を行いながら人々の学習活動を推進する地域の基盤(生涯学習プラットフォーム)の形成等を挙げた。また、②に関しては地域コミュニティや企業を含めた身近な地域における家庭教育支援基盤の形成、「放課後子どもプラン」等学校を地域の拠点として社会全体で支援する取組の推進、大学等との連携による地域の教育力向上への取組の推進等を挙げた。
国民の学習需要の高まりや社会の要請に応じた学習支援に対応し、より積極的な行政を展開していくことは、社会教育行政関係者にとって容易なことではない。しかしながら、関係者が地域内外における様々な資源を掘り起こし、連携を図り、目標を共有化したネットワークを充実していくことが大切である。また、国においても、このような地域の教育力向上、ネットワーク形成等に資する事業の実施や情報の収集・整理・提供に努める必要がある。各地方公共団体にあっても地域の実情に応じ財政措置を含む関係施策の充実が求められる。このような関係者の努力を通じて、生涯学習・社会教育の役割が再確認され、その重要性について広く社会の理解を得て、さらに参画・協力する人が拡がっていくなど、今後の社会の教育力の向上につながっていくことが期待される。「知の循環型社会」を回転させる開始点に今、立っているのである。
5.生涯教育行政の役割の転換とは何か
テキスト参考ページ p33−, p41
1970年代の半ば以降になると、高校の進学率が90%を超え、大学進学率も40%に近づくなど、受験競争が激化する。教育をめぐる問題に対処するため、臨時教育審議会において、教育改革に関する答申を出した。その中では、「学歴社会の弊害の是正」と「生涯学習体系への移行」が提言された。特に、「生涯学習体系への移行」に向けて、生涯にわたる学習機会の整備や生涯学習のための家庭・学校・社会の連携の必要性等を強調した。これまで文部省が進めてきた生涯教育の観点とは異なり、学習者個人の生涯学習に着目して教育改革の方向性を提言した。以降、「生涯学習」が教育改革のキーワードになっていく。文部省も答申を受け、生涯学習社会の実現に向けてさまざまな施策を展開させていくことになった。
答申を受け、1988(昭和63)年7月に文部省は機構改革を行い、省内を大きく再編した。従来の社会教育局を改組・拡充して、新たに生涯学習局が設置された。生涯学習局は、生涯学習振興課、社会教育課、学習情報課、青少年教育課、婦人教育課の五つの課で組織され、家庭教育・学校教育・社会教育・スポーツ・文化活動等生涯学習の振興に関する省内全体の施策の企画・調整を行うとともに、民間の教育事業の振興や、他の省庁が行う関連事業との連携協力を積極的に進めていくこととなり、総合的な生涯学習振興方策の展開を図るための体制整備が整うこととなった。社会教育行政も生涯学習を推進するための重要な柱としてその振興が図られることとなり、そのあり方が大きく変化していった。
1990年に「生涯学習の基盤整備について」を答申し、国と地方公共団体における生涯学習に関する連絡調整組織の法的整備、都道府県の生涯学習推進センター及び大学の生涯学習センターの設置、生涯学習活動重点地域の整備、民間教育事業の支援のあり方等について提言された。提言を踏まえ、生涯学習振興法が成立し、これはわが国で初めて生涯学習が法概念として登場した法律である。また答申では、生涯学習推進センターの機能として、以下の事業を集中的に行うことが提言された。①生涯学習情報の提供及び学習相談体制の整備充実、学習需要の把握及び学習プログラムの研究・企画、③関係機関との連携・協力及び事業の委託、④生涯学習のための指導者・助言者の養成・研修、⑤生涯学習の成果に対する評価、⑥地域の実情に応じて必要な講座を主催する。
2006年の改正教育基本法では、これまでの「個人の要望」に加えて、新たに「社会の要請」にも応える必要があることが盛り込まれるなど、生涯学習・社会教育関係の規定の充実が図られた。社会背景をもとに生涯学習行政は転換・進展をとげ、また新たな役割が生まれている。社会の要請を的確にとらえ、柔軟に変容していくことが求められる。